2011年4月13日水曜日

光と闇

 震災後ライトアップを見合わせてきた東京タワーで一昨日の夜から光のメッセージが灯っている。GANBARO NIPPON。昨夜、銀座方面に用があって、車で向かう途中にタワーの脚もとから見上げてきた。
 タワーを運営する日本電波塔に今回のライトアップ話をもちかけたのは照明デザイナー石井幹子さん。メッセージが見られるのは地上150mの大展望台南東側のみ。GANBARO NIPPON の文字は8400個のLED(発光ダイオード)電球でかたちづくられ、電力は太陽光発電でまかなわれている。太陽光発電システムは三菱化学が無償提供したという。(ライトアップは4/16日まで)
 LEDの控えめな光がつづるはかなげな文字には、いつものライトアップとは別の魅力を感じた。脚もとの公園では暗がりに人びとが集い、静かな花見の宴。これまたいつもの賑やかな花見とは違った情趣があった。
 ニュースタイル、案外、イケるんじゃないかな?

 節電・省エネが大命題となる今後の都市デザインを考えるとき、照明デザイナーの果たす役割はとても大きくなるだろう。石井さんはその道のリーダーとして、そのことを充分に自覚して、今回のシンボリックなライトアップを行ったのではないかと思う。
 川柳作家のやすみりえさんが3/22の朝刊で語っていたことを思い出す。彼女は阪神淡路大震災を神戸で体験した。
〈震災後、どのくらいたっていたでしょうか。光を失っていた神戸の街に、明かりのともったポートタワーが見えました。現実を受け入れなきゃと思いながらも、なかなか気持ちを立て直すことができなかった私の心に「復興」という言葉が刻まれた瞬間でした。〉

 話は変わって、このブログに何度も登場している花巻の岡部さんの、今日更新されたばかりのブログから、被災地の最新状況を見てみよう(本人の承諾を得て、抜粋、引用)。

〈気がついたら、震災から1ヶ月経っていました。けれど、現地の方々は「一日も進んでない。津波は昨日のことのようだ」と言います。
 避難所の食事は、いまだに1日2食や、カップ麺・菓子パン・缶詰に偏っているところがあります。それでも、初めの頃よりはずっといい、と言いますが、放っておいていい問題とは思えません。
 あちこちから届く物資も、「全員の分がなければ不公平になるから」という理由で、集積場に積みっぱなしという話も2カ所で聞きました。大きな避難所ほど発生しています。
 人手がないからなのかと思って、自宅避難の方が手伝いを申し入れると「中の人間でやるからいい」と断られたそうです。事情があるのでしょうが、そういったことで確執が生まれるのも心配です。
 避難所宛に郵便や宅急便が個々に届けられるようになってきました。それはとても喜ばしいことですが、ある家族には食料や現金が届き、外出外食もできるようになる。そうじゃない人もいる。そういった格差も広がってきているようです。〉

 こういうレポートを読むと、テレビや新聞から得られる情報がいかに偏り、「きれいごと」になっているかを思い知る。
 疲弊、サボタージュ、嫉妬、確執、格差……多くの人のいとなみと思いが交錯するということでは避難所も外の社会も同じなのだ。「きれいごと」では済まされない、人間の暗部、心の闇、悪といったものが存在するという事実から、われわれは目を背けてはならない。
 光明はきっとある。しかし、道は遠い。

0 件のコメント:

コメントを投稿