2011年3月27日日曜日

花巻の岡部さんのこと

(3/26記す)
岩手県花巻市に住む岡部慶子さんが携帯メールで何年かぶりの便りをくれたのは震災の8日前、3月3日のこと。僕が某女性誌に書いたスペインの記事を目に留め、スタッフクレジットに僕の名前を見つけて、久しぶりに連絡してくれたのだ。

岡部さんは、画家・イラストレーター永沢まことさんの門下生で、本人も生徒さんをもって絵を教えたり、スケッチのイベントを催行したりしている。永沢まことさんの本や画集の企画編集を僕がやらせてもらっていた縁で岡部さんと知り合ったのは10年以上も前のことだ。明るくてオープンマインドで行動力があってちょっとお茶目なところもある岡部さんとはすぐに腹を割って話せるようになったことを覚えている。東京出身の岡部さんがご主人の仕事の関係で花巻に引っ越されたことまでは聞いていたが、長らくご無沙汰していた。

3月11日。地震が起こってすぐに思ったのは岡部さんの安否だった。携帯メールを送ると、「温泉に入っていてパニックでしたが無事です。東京もすごそうですね、大丈夫ですか?」と逆に心配してくれた。

震災から丸2週間が経った昨日、再びメールで様子を訊いてみた。岡部さんは被災地のための物資調達と手配の手伝いをしているとのこと。そして、「ブログを通して被災地に配る絵本を集めています」とのことだった。このやりとりをするうちに僕の頭のなかにピカッと電球が灯った。

被災地では水や食料や毛布や燃料や医薬品がゆきわたると、次には清潔な下着や服や靴が必要になる。歯磨きセットや入浴の機会、散髪といったことがそれに続くだろう。作業をする人には長靴や軍手が要るだろう。被災地のニーズは日々変わっていく。そうしてライフラインが復旧すると、被災者は時間をもてあますようになる。そのときになって重要となるのが「心の糧」となるものだ。被災地には新聞は届けられているが、絵本や雑誌や本はないらしい。僕は震災以来ずっと家とその周辺にいて、誰に届くともしれぬ声を上げつづけていたが、ようやく「実体」を伴った支援のすべを見つけたような気がした。本なら集められる!

おりしも紙媒体は電子媒体に追われ、衰退・絶滅の危機に瀕している。それに携わってきた者は自分が現代の恐竜にでもなったような気がしていたが、被災地の人びとが本を手に取り、ページをめくる光景をイメージするとき、そこにはiPadはどうも似合わない。紙媒体は、インド洋の深みをのたりのたりと漂うシーラカンスのようにまだ生きていた。生きる意味があったのだ。

岡部さんには1歳になる男の子がいる。彼女のブログを読むと、子どもの存在が親にとってもコミュニティにとっても希望と同義であることがわかる。ブログには被災地の現状とアクションが日々つづられていて、雑ぱくなTVやネットのニュースなんかより、よほどリアリティがある。
このブログを読んでくださっている方にもぜひ一読をお勧めする。

◎岡部慶子さんの「スケッチ日和通信」:
http://sketch-biyori.cocolog-nifty.com/

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