2011年3月25日金曜日

木蓮の花に吹く風


(3/25記す)
きょうの最大の話題は、昨日作業中に被爆した東電作業員の続報。作業場の水に含まれる放射性物質の値を測ったところ、通常施設内に流れる水の1万倍の放射線量だったとのこと。「1万倍」が端的に語るのは3号機の破損の度合いだろう。自衛隊や消防庁による連日の注水で、少しずつ安全性を回復していたかに思われた原発問題は、また濃い霧のなかへと引き戻されたかたちだ。

目黒区周辺は午後から強い風が吹いている。咲き始めた木蓮の花が飛ばされていないか、あとで見にいってみようと思う。春を告げるはずの風や雨や雲が、ふだんとは違った趣を見せてわがセンサーに感知される。地震の日から、もののあわれを感じる部分がビビッドになっているので、些細なことにも強い感銘を受ける。変性意識状態ということなのだろう。心の同じ作用が、日常のありふれた行為を色鮮やかにしている。たとえば顔を洗ったり、歯を磨いたりすること。熱い湯を沸かしコーヒーやお茶を淹れて飲むこと。カップの縁からたらすミルク。炊きたてのごはんやトーストしたてのパンを食べること。具のたくさん入ったスープをこしらえることができること。風呂の湯に首まで浸かって心身をほどけさせること。いちいちが特別で有り難いことに思える。

小さなトピックスを拾っておこう。

新聞に載った被災者の声。〈福島市天神町、大和田伊助さん(89)「みなさんに助けられているから、不便だけれど苦痛じゃないですよ。年の割には元気だって言われます。たいした病気をしていないからね。ただ団体生活は初めてだから、早く家に帰って好きなものを食べたいね。被災地以外のあなた方こそ、元気でがんばってくださいよ」(3/23朝日新聞朝刊)。こっちが逆に励まされるとは!

JT(日本たばこ産業)は30日から4月10日までたばこ全製品の出荷を一時的に停止する。震災により、たばこの製造工場が被害を受けたほか、材料も調達しにくくなっているため。(3/25、YOMIURI ONLINE)。たばこよ、お前もか!

今朝、郵便受けに「ハナコ・フォー・メン」が届いた。僕はこのなかで芥川賞作家・朝吹真理子さんのインタビューをやらせてもらっており、編集部から見本誌として届いたものだ。震災の影響で発売日は1日延びたと聞いた。この雑誌のなかに寺田本家という千葉の造り酒屋が取り上げられていた。自然農法と非機械化ですばらしい酒を造っている蔵だ。僕がよく飲みに行く原宿のバー誤解の店主もこの蔵の大ファンで、いつもここの酒を飲まされるが、たしかにしみじみと旨い酒である。誤解店主によると、この蔵も震災による断水で仕事ができない状態であるという。水道が復旧しても、利根川水系の水とコメの安全性が疑われるいま、そして今後、見通しは明るくない。

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